光る水面のドブイナジー

書評とイマジンを、だだもらしていこうというヴログ。

「バイ貝」 町田康

すんげえ本だ。町田康的に言えば、げっつい本である。
町田康の署名本を手に入れてしまった。

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これはもうあれ、宝物であるとしか言いようがない。これより常時、枕の下にこの本を敷いて、夜な夜な町田ワールドで夢想する。マチダ風にいえば、してこます。ジョージ。

バイ貝

バイ貝

 

 

あらすじ>
人間、金じゃねえ。と言いながらもやはり金が必要な資本主義社会に生きる現代人。金を得ることは鬱のたまることで、金を使うことで人は自由を感じ鬱が霧消する。ドストエフスキーは言った、「金は鋳造された自由である」と。
その言葉に従い、鬱のたまった町田康が、鬱を散じた自分を夢想し四苦八苦するお話。

 

おもろかった。
ネタ・バレで言ってしまうと、購入するものは鎌、宝くじ、中華鍋、カメラ。
合間に、趣味についての妄想がある。
どれもこれもまあ結局失敗して鬱が蓄積していくのだが、そういう結末がなんとなく見えていても、そこはあれ、町田康の言葉とファンシーな思念思想によっておもろいことになっている。

一番のお気に入りは宝くじの件で、当選を祈願して神社に参る時のマチダコー。

そこで私は柏木をうったうえで以下のごとくに祈念した。
「まああの、可能な限り、いいのを当ててくださればと思っておりまして、空きがあれば四番でもいいし、三番でもいいし、もちろん、二番、或は、まあ、そんなことはないでしょうが、あなた様の方で思し召しがあるのであれば、それはもう一番でも結構でして、あ、っていうと、一番を貰ってやってもいい、っていう不遜な感じに聞こえますけれどもそんなことは勿論なくて、すみません、身に余る光栄というか、もう、ほんと、ありがたくかたじけなく、畏れかしこみながら頂戴するって感じなので、ほんと、そこのところ、無理のない範囲でよろしくお願いしたいのですが、あの、一点だけいいですか?あの、最低でも五番はよろしくお願いします。そこらへん頼む人は少ないと思いますんで、そこだけは必ず最優先でお願いします。そのうえで、上に空いてるとこがあればいれていただくということで、あの、ほんと不躾で申し訳ないんですけど、よろしくお願いします。あ、あと、家内安全とか健康とか、そういう方面も、ほんとよろしくお願いします。すみません、いろいろ言っちゃって」

                             40ページ

 人によっては「なにこれ、読み辛いし、ただのおっさんの妄想の垂れ流しじゃないですか。なんかへコヘコ諂いすぎだし情けない。」という感想を抱くかもしれないが、自分はとても面白く、ラブな文章である。
この「垂れ流す町田康」に出会うと、安心する。「ああ、これだよこれ」てな感じがある。

こうした長々とした祈願にも拘わらず、結局、この宝くじは何も当たらずに終わる。
一般であれば「ふ、宝くじなんてしょせんこんなものさ。ふ。」とか嘯いてそれで終わりだが、そこは流石の町田康。小さな失敗からも感じ取るアンテナを持っている。宝くじの当選、以外の価値を発見する。まあ、こじつけって言われてしまえばグウの音も出ないが、まあ人生なんて人の世なんてこじつけであるから万事オーケー。

 

それから、「エリート」についての話もおもろい。
なんでそんなものに「エリート」なんて名前をつけるかな、とその想像力の偉大さを思わずにはいられない。

その他、ホームセンターで鎌に対峙して思うこと、趣味についての考察、中華鍋のくだり、まあどれもこれもマチダコーのエッセンスがちりばめられていて、町田愛好家であれば抱腹絶倒間違いなし。とは過言かもしれないが、満足の一冊である。

 

っていうか、消費に対する町田康の煩悶・躊躇・衝動は、多くの人が日々無意識に感じていることでもあると思う。
現代社会についてまわる消費活動を、マチダフィルターを通してみるとこんなにもファンシー。そういう本だった。