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暇人のイマジン

書評とイマジンを、だだもらしていこうというヴログ。

筒井康隆 「七瀬ふたたび」

書評 筒井康隆

超能力があったらいいなあ、と時たま思うことはあったが、もし本当にそんな力を得ることになったら、それはそれで大変なんだなあ、ということを単純に感じるシリーズですた。七瀬シリーズ

七瀬ふたたび (新潮文庫)

七瀬ふたたび (新潮文庫)

 

 なんかシリーズのまとめっぽくなってるのは、手違いで第3章エディプスの恋人から読んでしまったためで、個人的にはこの七瀬ふたたびでシリーズ完結となる。
よく言えば、スターウォーズの順番みたいなそんな感じ。

3→1→2、と読み進めることになったが、それはそれで、ああ、あの時はこういう過去があったからそんなことになってたのね、と時間差の爽快感のようなものがあるので、別に悪いもんでもない。
それだけどこから読んでも楽しめるだろうし、おもろい話だった。

 

<あらすじ>
お手伝いさんを辞め、相変わらずテレパスとしての特殊な孤独感に包まれていた七瀬であるが、ふとした事件を機に同様の超能力を持った人物と巡り合う。念力、予知、透視、時間移動、そして精神感応能力。仲間になる者もいれば、敵になる者もあり。新たな悩み事も増えるが、生まれて初めての同志に心通わせる七瀬。しかし、そんな安穏とした日々もやがて終わりを迎えることとなる。すべては超能力者であるがゆえに。

 

 

あれまー。みんな死んでしまった。七瀬以外は。
超能力者=常人の世界秩序を乱す者、ということで超能力者暗殺部隊に追われてしまう七瀬たち。
藤子や恒夫とかもまあ同情したけど、ノリオとヘンリーの死は唐突で、悲しかった。
特にヘンリー。黒人で念力使いのヘンリー。なんとなれば、僕は黒人キャラが比較的好きである。これはサウスパークのシェフやおしゃれ手帖のスライ・アーノルド、浅田次郎「プリズンホテル」のゴンザレスなどの陽気なやつらの影響が多分にあるが、そういうことでこういった創作ものに出てくる黒人はとても好きなのだ。本物の黒人はよく分からない。卓球したりして遊んだことがあるくらい。

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真ん中にいるコックさんみたいなのがシェフ。名前は忘れたが、非常に愛嬌のある人物で、愛欲家。常にイイ女と寝ることについて考えているという下心の化身。
スライ・アーノルドとは、↓の男である。小石川家の妻と不倫関係にあり、小石川家の屋根裏で焼き鳥屋などをして生計を立てている。こちらも非常に愛嬌のある人物。

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多少脱線したものの、まあそんな感じでやっと巡り合えた同志と、その亡骸を見ることもなく永遠に別れることになるというラストは、なんとも物悲しいものですなあ。
1と3では、そこまで心を許す関係になる人間はいないもの。3で出てくる香川くんくらいか。
超能力者は超能力者で大変なんどすな。でも、超能力者ってだけでこんなにタマ狙われるもんかねえ、というのはわずかな疑問としてくすぶる。超能力を使えると言えども、何かと権利を主張する世の中なので「超能力者人権保護団体」なども出てくるだろうし、なんやかやと活用できる場所はあるだろうし、まあ能力によって差はあるだろうけど、全地球人を敵に回して命を脅かされるものだろうか、と。僕の想定が甘いのでしょうが。
まあ、テレパスは相手にしたら嫌だなあ、というのはあるね。言わずが花というか、本心をあえて隠すことで余計な諍いが未然に防がれているというのは、これはまぎれもない事実であるし。僕も七瀬を前にしたら、みだらな妄想・想像に耽る可能性もなくはないし。七瀬いわく、それは男にしたら自然なことだから気にしなくていいとのことだが、やはりそれを本人に知られるのは嫌だし。

まあでも、だからといって殺しちゃうのはそれは行き過ぎなのではあるまいか、もう少し共生の道を探ってみるのが賢明なのではあるまいか、というのが25歳無職としての意見。

 

また、改めて3章とこれまでのつながりを考えてみると、3章で香川くんと果てしない恋に落ちるというのが七瀬にとっていかに大きな事件だったか、というのがよく分かる。
これだけ身の回りの人や出来事、自分の処し方に鉄のような意思をもっていた七瀬がそのような恋愛に溺れるということ。これは結局、神様の思し召しっつうか神によって操作された運命ではあったけど、そう考えてみると、七瀬をはじめとして色んな超人的能力を持った人が出てきはするものの、それはあくまで布石でしかなく、結局は女神礼賛の物語という気もする。結局は、人類には不可知な神様という存在がやっぱりすげえ、っていう。

ということで、現代の事情を反映させて改めた神話、という見方もできるのではないかな、とも思ったり思わなかったり思ったり。

 

超能力というものへのあこがれとその脅威、知られざる苦悩。
人間の本音と建て前という性質の不気味さ。
そして神の偉大なる影響力。
とても面白いシリーズでした。

 

ちなみにこの本もフロイトユングなどの心理学的な要素が多分に盛り込んであり、人間とはかくも深層心理・前意識に支配された存在なんだ、ということがいやというほど書いてある。