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暇人のイマジン

書評とイマジンを、だだもらしていこうというヴログ。

浅田次郎 「プリズンホテル 夏」

書評 浅田次郎

壬生義士伝を読み、すっかり浅田次郎の虜になってしまいました。壬生義士伝も近いうちに書かな。相変わらず良い塩梅のレビューなるものが分かりませんが、書いてみます。

 

<あらすじ>

今をときめく小説家・木戸孝之介はある日、叔父であり極道でもある仲蔵から、彼の所有するホテルに招待される。そのホテルは一見、開発に取り残されたどこにでもあるようなうら寂しいホテルだが、どうやら様子が少々おかしい。ごてごてした派手な内装に、防弾ガラスと鉄扉による鉄壁のセキュリティ、ごつい男のお出迎え、「カチコミ」「ガサイレ」「仁義」といった文字の並ぶ諸注意、そしてホテルのシンボルは桜紋ときている。そう、ここは任侠団体専用のホテル、人呼んで「プリズンホテル」である。

任侠団体専用ということでホテルの懐は深く、宿泊客はワケアリばかり。その筋の者はもちろんのこと、心中一家や離婚をもくろむ老夫婦、さびれたアイドルや素性の知れない怪しい旅人、果ては仇である警察まで泊めてしまう。他人に言えないそれぞれの事情を抱えた人たちがひとつ屋根の下に集ったからには、何か起こらないわけがない。一年を通して、様々な客人が訪れてはドタバタとひと騒動を起こしていく。ホテルは一時混乱の渦に巻き込まれるが、極道の義理人情と数奇な運命によって傷ついた人々の心は不思議と癒されていく。そんなユニークなホテルでのお話。

 

 

あらすじって難しい。

季節ごとに書けばよかったんだなあ。季節ごとに書こう。というか、全体を通してレビューする腕がない。記事を分けてスパスパ書きます。

イカ、ネタバレです

 

夏の客人は離婚間際の若林夫妻、心中をもくろむ小田島一家、清子の夫・・・くらいでしょうか。うろ覚えで恐縮です。

 

木戸孝之介は一番ひどい時期。とにかく何かと殴ったり蹴ったり、突然発情してコトに及んだり、好き勝手ランボーな奴です。まあ、その背景に家庭の事情があることを汲んでみれば大目に見ることもできるか・・・・とも思うこともあったりしましたが(階段の踊り場で突然幼児退行するとことか)、やっぱりいただけない奴ですね、この時点では。孝之介め!

でも、人って他人が全然わからないだけで、それぞれが過去のしがらみに縛られていたりすることって、往々にしてあるんですね、きっと。
だからと言って乱暴していいわけではありませんが、孝之介は人がそれぞれの痛みを抱えて生きている象徴でもあるんだと思います。

 

そして、そのわだかまりを少しずつ溶かしていってくれるのが、このプリズンホテルなんですね。

 

気に入ったシーンとしては、まず繁と黒田のやり取り。
花沢支配人のドラ息子である繁に鉄拳制裁という愛のムチをくれ、バイクを通して教育・更生指導をする黒田の姿はなんというか、人間の筋みたいなものを感じました。
鉄拳制裁なんて昨今のマザーが聞いたら卒倒もんで賛否両論ありそうですが、黒田の真意と彼のセリフには響くもんがあります。

「相手の顔色を見ながらケンカの売り買いするような男にバイクは乗れねえよ。どうだ、ちったァ痛え思いをした分だけ、よく見えるだろうが」

「よおっく聞け。決して後ろに退がれねえ。走っていなけりゃ倒れちまう。雨が降りゃ雨に向かって、風が吹きゃ風に向かって走り続けにゃならねえ・俺ァ若え時分、命と取っかえてでもこいつが欲しかった。バイクってのァ、そういうもんだ」

「ここらでおめえの人生を変えてみろ、ポンコツ」

                       本文245,6ページより

 

そして、梶料理長と服部シェフの師弟関係のはじまり。

梶は先代から厨房に入っている古参の実力者。対する服部は花沢と同じく「左遷」されてきた新参者。しかし新参とはいえ、洋食界では高名なシェフです。

立場上、上司と部下という関係になりますが、互いの腕を認め合う仲。それぞれに和食と洋食の矜持もある。ところが、服部は梶の凄さを見せつけられます。まあなんだかんだで、服部が至らなさを実感し、師弟関係に落ち着くんですが、この関係がどうなっていくのか、という点も面白かったです。

 

 

その他、思わずじんとするエピソードがたくさんありました。

仲蔵が先代のオーナー一家の骨と一緒にアイスを食べながら涙を流すシーン。

仲蔵が語る花沢支配人の「左遷」の本当の理由。

若林の変化と小田島一家の結末。

最後に宙に舞う離婚届のヒラヒラ。

 

一筋縄ではいかない、それでいてポッと心に火が灯るような人間劇を次々と繰り出してくれる一冊でした。

 

 

シリーズ通してレビューしようと思いましたが、途中で僕には無理だと気づき、夏だけでもこんな感じになってしまいました。レビューってむずかしいんですね・・。

 

とにかく、「平成の泣かせ屋」の異名をとる浅田次郎さんのとっても面白いシリーズであることは間違いなし。

 

PS:作者あとがきもこれまた面白い。